セブンスナイト(SEVENTH NIGHT)◆HALTECH™(ハルテック)・MoTeC™(モーテック) インジェクションプロショップ

BIG BIKE Cruisin' No.47

BIG BIKE Cruisin' No.47 "特集 新・吸気時代" 掲載記事

HALTECH ENGINE MANAGEMENT SYSTEM

手間をかけてのセッティング 完成度の高いフルコンFI

今回の試乗中、唯一のフルコンによるFI(フューエル・インジェクション)コントロールをしているバイクだ。搭載しているエンジンマネージメントシステムは、オーストラリアのハルテックというメーカーのもの。エンジンマネージメントシステムメーカーとしては、老舗と言える。

このハルテックのシステムを使い、キャブレター車であるカワサキZZ-R 1100をFI仕様にしたのは、神奈川県川崎市(現在は横浜市都筑区)にあるセブンスナイトだ。同社はハルテックの販売、テクニカルアドバイザーとして活躍しており、代表の山登氏は、エンジンマネージメントシステムとしてのハルテックの能力に着目し、二輪の世界に導入。独学で、キャブレター車にFIを装着して、実際に走らせている。今回はそのバイクに試乗させてもらうことになったのだ。ちなみにこのZZ-R 1100は、山登氏の足として毎日活躍しているバイクで、走行距離は40,000kmを超えている。エンジンに関しては、フルオーバーホールを終えたばかりであり、何ら問題はないのだが、足回りに関して特別なメンテナンスはしていないということで、そのあたりの評価は勘弁してほしいとのこと。そのこともあり、今回はエンジン中心のインプレッションを紹介したいと思う。

コンピュータセッティング90年代前半まで、私はメーカーで車両の開発を行っており、その中にはFIに関するテストも含まれていた。当然のことながら、様々なテストをしたが、実際のところ、実用になるものはまだまだ先と思えるような印象しかなかった。ところが現在では、驚くべき進化でFIが完成されている。その理由の一つには、当時は二輪担当のスタッフばかりで行っていたが、その後、四輪の開発の人間との交流があり、かなり四輪的考え方が入ることで、進化したようだ。山登氏も以前、四輪関係の仕事をしていたということで、どのようなアプローチがされていて仕上げられているのか、興味深い試乗となった。しかし正直言って、メーカーレベルで苦労していた経験を持つ私にとって、ショップレベルでどれくらいまとめることができるのか、不安要素の方が大きかった。

しかし、そんな不安は走り始めて、驚きと共に吹き飛んでしまった。キャブレターと同様、いや、ポイントによってはそれ以上の仕上がりを見せていたのだ。リニアな出力特性で、ピークはスタンダード以上の力強さ。エンジンはフルオーバーホール時に、カムシャフトをヨシムラ製に交換しており、さらにはマフラーも変更されているという。特にマフラーは、取り回しが今ひとつ気に入らないため、本来は右側にサイレンサーが出されていたものを、取り回し的に有利になるであろう左出しに変更。シャーシダイナモ上で、右出しの状態よりも上がったとのことで、出力的にはスタンダードよりも出て不思議ではないのだが、そうしたエンジンをフルに生かすことのできるFIに仕上がっている印象だ。

プレッシャーレギュレーターと燃料ポンプスロットを開ければ開けた分だけスピードを上げ、回転も上がり方に応じた自然な盛り上がり方をする。本当にデジタルで制御されているのか、不思議に思えるほど、滑らかだ。スロットルを戻しても自然なエンジンブレーキが効く。山登氏にこのあたりを聞いたところ、スロットルを急に閉じた際には、次にスロットルを開けた時にマニホールドに溜まったガソリンが一気に燃えてドン付きになってでることがあるので、強制的に空気を入れて燃焼させてしまう設定にしているという。こうした細かい設定が功を奏して、本当に自然なスロットルレスポンスを実現している。スロットルの開け閉めも閉じ側のフィーリングも自然で、セッティングがうまく出ていないキャブレター車よりもはるかに自然な出力特性になっている。フワついたサスペンションも、このリニアな出力特性によって、それなりにコントロールすることができるほど。足回りに関してはメンテナンス不足で評価しないでほしいと山登氏は言っていたが、それがあまり気にならないほど、バランスよく走ることができた。やはりハンドリングは操安で決まるんだということを、本来とは違った形で痛感することとなった。

ワンオフスロットルボディ特にスロットルボディに直径46mmという大きなサイズを使っており、これが出力的に有利になっているのだろう。このスロットルボディは山登氏がFI化を考えた際、他に流用できるものがなかったため、ワンオフで、アルミの削り出しという豪華な作りを外部に発注し、制作したもの。キャブレターならスロー系はセッティングが出ないであろうこれだけの大きなボアでも、FIならセッティングが出せるのだ。今となっては、GSX-R750が同じ直径46mmで出ているため、それほど驚くことではなくなったが、それでも、ショップレベルでこれだけのビッグボアのFIをここまで制御できているのは、脅威に値する。

山登氏によると、ベースセッティングはシャーシダイナモ上で行ったが、基本は実走ですべて決めたと言う。ハルテックのマニュアルには、実走でマッピングする際には、助手席にパソコンをコントロールする人を乗せ、二人で行うのが理想的と記載されているそうだ。しかし現実にバイクでそれを行うのは不可能に近く、山登氏は一人で走行を重ね、バイクを止めてセッティングを変えては再び一人で走るという、手間のかかる作業を繰り返し行い、セッティングを進めたと言う。とは言っても、1,100ccもあるエンジンの過度特性を見るのは、当然スピードも出るし、本当にスロットル開度と回転数、FIの特性などを理解していないと出せるものではない。
また山登氏の使う現在のハルテックは、グレードの関係から、点火タイミングのコントロールも行う予定だそうだ。どんな仕上がりになるか実際興味深い。

また今回、標高の高い場所でテストを行ったのだが、アイドリングでも安定しており、実走行の方も、手作業による補正は全く必要としなかった。このあたりはやはり、FIのメリットが出るところであるのを痛感させられた。結局は、何を使っているのかではなく、人間がシステムをどう使うかが大事であることを痛感させられた試乗だった。FIに対する私のイメージを大きく変えるほどの仕上がりだった。見事だ。

*文章内の写真補足文

  • 写真上:山登氏はこのようにタンクバッグの中にノートパソコンを入れて持ち歩き、気になるところがあるとECUに接続してデータを入れていく。ソフト自体はDOS/Vで動くソフトのため(WINDOWSにバージョンアップする予定だそうだ)、多少古いパソコンでも十分に動かすことができるのはありがたい。こうした作業の積み重ねで、完成度の高いマップが完成されたのだ。
  • 写真中:ファーストアイドルバルブとエアーブーストバルブ
  • 写真下:アルミ削り出しのスロットルボディ

*引用元:(株)スタジオ タック クリエイティブ
BIG BIKE Cruisin' No.47より一部抜粋して掲載させて頂いております。
*当時の記載文をそのまま掲載してありますので、現在の仕様とは若干異なる場合があります。 © STUDIO TAC CREATIVE 2000 Printed in Japan

↑このページの最初に戻る

お問い合わせ

SEVENTH NIGHT (セブンスナイト)HALTECH™正規代理店

神奈川県横浜市港北区新吉田町4355 
電話: 045-592-6923
定休日: 火曜日(日曜・祝祭日は不定休)
お問い合せ(メール)

特定商取引法に基づく表示
通販規約
プライバシーポリシー